狂犬病って名前は知ってるけど、どんな感染症なんだろう?
その名前は知っている人は多いと思いますが、実際どういう感染症なのか知っていますか?
狂犬病はとても恐ろしく、発症すればほぼ100%死んでしまう感染症です。
この記事では、狂犬病の
- 発症後の症状
- 潜伏期間
- 感染経路
- 日本や世界の発生状況
- 狂犬病ウイルスが体内に入った時にすべきこと
- 狂犬病の予防方法
について詳しく説明していきます。
日本国内で狂犬病の発症は2006年からありませんでしたが、2020年5月22日に愛知県豊橋市で狂犬病の発症が確認されました。
日本国内では、狂犬病の感染を不安に思う必要はありませんが、海外に行く際には知っておくべき感染症のことなので、どのようなものなのかを知っておきましょう。
狂犬病とは?発症したら致死率ほぼ100%の感染症!
狂犬病とは、発症すればほぼ100%死亡してしまう危険な感染症です。
狂犬病という言葉に「犬」が入っていることから、「犬だけが感染するものなの?」と思う人もいるかもしれませんが、狂犬病は犬だけでなく人間を含むほぼ全ての哺乳類に感染します。
実際に狂犬病の発症により世界中で毎年5万人以上が亡くなっています。
狂犬病は、約4,000年前から人類に知られていましたが、医療が発達した現在でも発症した後にできる治療方法がなく、発症すればほぼ100%死亡します。
ほぼ100%というのは、これまでに100万人以上の人が狂犬病が原因で亡くなっていますが、助かった人はわずか数名しかいないからです。
狂犬病発症後の症状
狂犬病が発症すると下のような段階で症状が進行していきます。
段階 | 症状 |
---|---|
初期段階 | 発熱、頭痛、嘔吐、食欲不振、噛まれた場所がいたんだり、かゆくなる |
中期段階 | 筋肉の緊張、痙攣、不安感、水と風が怖くなる(音や感触など)、麻痺、幻覚、精神錯乱 |
末期 | 昏睡、呼吸困難により死亡 |
狂犬病に感染し、発病すると水や風を怖がる症状が出ます。
そのため水分が取れなくなり、唾液でさえも飲み込めなくなります。
そのような「水を恐れる」という症状があることから、狂犬病は別名「恐水症」と呼ばれることも。
狂犬病は進行が進むにつれ、犬の遠吠えのようなうなり声をあげ、よだれを大量に流すようになります。
その後昏睡状態になり、呼吸麻痺が起き、死に至ります。
このような症状を「狂った犬」のようになるということから、狂犬病と名付けられました。
狂犬病の潜伏期間
狂犬病の潜伏期間ですが、これは人や状況によってバラバラです。
一般的には狂犬病が体内に進入すると、約1〜3カ月ほどの潜伏期間があると言われています。
ただし、これは噛まれた場所(狂犬病ウイルスが体内に入った場所)が脳に遠いほど遅くなります。
同じ狂犬病ウイルスに感染した動物から噛まれた場合でも、腕を噛まれた人よりも足を噛まれた人が発症が遅くなるということです。
長い人で2年間もの潜伏期間があった例もあります。
狂犬病の感染経路
狂犬病の感染は、狂犬病ウイルスに感染した犬やコウモリなどのほぼ全ての哺乳類から感染する可能性があります。
狂犬病ウイルスを持った生物に噛まれることにより、唾液に含まれるウィルスが体内に侵入することによって狂犬病に感染します。
噛みつかれることによって感染することが多いですが
- 傷口
- 目
- 鼻
- 口
などの粘膜を舐められることによっても感染します。
さらに、犬や猫など前足を舐める動物もたくさんいるので、狂犬病ウイルスが付着したツメでひっかかれただけでも感染する可能性もあるので注意が必要です。
狂犬病ウイルスは通常、人から人への感染はないので安心してください。
感染媒体となる動物も地域ごとに違っており、
- アジアは犬
- オセアニアはコウモリ
- 中東は犬、狼、キツネ
- 北欧はキツネ、コウモリ
- アフリカはコウモリ、マングース、犬、キツネ、ジャッカル
- 北米はコウモリ、アライグマ、スカンク、コヨーテ、キツネ
- 南米はマングース、コウモリ、犬
からの感染が多いです。
もちろん、全哺乳類に感染する可能性があるので、どこであっても野生動物には気をつけるようにしましょう。
世界の狂犬病の発生状況
引用:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html
基本的に海外ではどこでも狂犬病に感染する可能性はあります。
狂犬病にかかるリスクがほぼ0な国は
- 日本
- イギリス
- フィジー
- オーストラリア
- ニュージーランド
- キプロス
- グアム
- ハワイ
- アイルランド
- ノルウェー
- アイスランド
などの「狂犬病清浄国」と呼ばれる一部の国のみで、ほぼ世界中で感染リスクがあります。
上記で挙げた感染リスクが低い国に共通していることは「島国」であるということです。
島国だと、狂犬病を一度押さえ込み、外部からの侵入さえ気をつけていれば、コントロールしやすいからだね。
逆に、大陸にある国は、国がいくら狂犬病対策をしても、野良犬なんかは簡単に国境を越えて移動したりします。
そのため、完全に0にすることはほぼ不可能なのです。
世界の中でも特にアジア圏の感染が多く、その中でも狂犬病による死亡例が1番多いのはインドです。
インドだけでも毎年約3万人以上が狂犬病が原因で亡くなっています。
インドで狂犬病で死亡する人が多い原因は、人間の身近にいて、攻撃力の高い「野良犬」が大量に徘徊しているからです。
日本における狂犬病の現状
日本では、狂犬病の発生確率は0%とされています。
0%の国は世界の中でもとても珍しいです。
0%に抑えられている理由は
- 飼い犬に狂犬病ワクチンの摂取が義務付けられているから
- 日本では野良犬は捕獲されるから
の2つが大きいです。
まず1つ目の理由ですが、日本には狂犬病予防法というものがあり、飼い犬には狂犬病の予防接種を毎年受けさせることが義務付けられています。
この義務によって日本の飼い犬が狂犬病に感染する確率はほぼ0%になっています。
2つ目の理由である「野良犬の捕獲」についてですが、日本では野良犬が見つけられると保健所に連れていかれるようになっています。
そして、飼い主が見つからなかった場合、数日後に殺処分されてしまいます。
犬にとっては生きにくい国なのは間違いありませんが、この対策によって日本人は狂犬病にかかるリスクを避けられています。
実際に日本における狂犬病の人への感染は1957年以降はありません。
感染源である犬への狂犬病の感染も1956年の6頭を最後に、現在までありません。
日本でも狂犬病の発症はある(2020年5月に愛知県豊橋市で確認)
日本国内での人や犬への感染は確認されていませんが、日本人の日本での狂犬病の発病に関しては1970年に1人、2006年に2人死亡しています。
この3人は日本で狂犬病に感染したのではなく、
- 1970年の人はネパール
- 2006年の2人はフィリピン
でそれぞれ犬に噛まれており、それが原因で感染し、帰国後発症したものとされています。
また、3人は噛まれた後に狂犬病のワクチンの接種を受けていませんでした。
繰り返しますが、日本で発病した人はいますが、日本で感染した人は長年出ていません。
このように日本に住んでいる人は狂犬病の心配をしないでいい世界中の中でも数少ない国の一つなのです。
噛まれた(狂犬病ウィルスが体内に入った)後の対処法
狂犬病ウィルスを持った動物に噛まれてしまった後はすぐに石鹸を使って、流水で水洗いをしてください。
蛇に噛まれた時の対処法のように、傷口を口で吸い出そうとしてはいけません。
口から感染してしてしまうからです。
水と石鹸で洗った後はできるだけ早く医療機関に行って治療を受けてください。
狂犬病ウィルスが体内に入ったとしても、発病する前にワクチンを打ちに行けば大丈夫です。
発病前にワクチンの接種をすることで、発病を抑えられる効果が認められているので、必ず接種するようにしましょう。
ワクチンの接種は一度の接種だけでは終わらず期間を開けて、複数回のワクチン接種が必要になります(地域やワクチンの種類によって違ってくる)。
日本の場合は、
- 0日
- 3日目
- 7日目
- 14日目
- 30日目
- 90日目
の全6回を皮下に接種になります。
動物に噛まれる以前に狂犬病の予防接種を受けている人であっても、傷口を洗い、必ず医療機関に行く必要があります。
事前に受ける予防接種と噛まれた後に受ける予防接種は別の種類になるからです。
ただ、事前に予防接種を受けている人は受けていない人よりも、噛まれた後の予防接種の回数が少なくて済みます。
日本では狂犬病の発生がないので、狂犬病のワクチンを常備している病院は限られています。
そもそも日本の医者は狂犬病の対処に慣れていないので、できるだけ海外で処置することが望ましいよ。
海外で病院に行くことを考えて、海外旅行保険には必ず加入しておこう。
狂犬病のウィルスを持っていてもまだ発症しなかったり、どの生物がウイルスを持っているかは外見から100%判断できないので、動物に噛まれた時は「ウィルスを持っていること」を前提として、とにかく医療機関に行きましょう。
発症前に感染しているかどうかを診断することができません。
噛んだりしてきた動物が2週間以上狂犬病の症状を表さない場合は、その動物が狂犬病にかかっている可能性がなくなります。
狂犬病に感染しても発症するかは分からない
狂犬病にかかった生物に噛まれ、狂犬病ウィルスが体内に入り感染したとしても、必ずしも発病するとは限りません。
噛まれた後の発病率は32〜64%と言われており、傷の深さや体内に入ったウィルスの量によって違ってきます。
噛まれたからといってパニックにならないようにしましょう。きちんと傷口を洗い、ワクチンを接種さえすればほぼ発病は抑えられます。
狂犬病にかからないためにできる予防法
狂犬病の予防方法として以下の2つが有効です。
- 動物と触れ合わない
- 狂犬病の予防接種を受ける
動物と触れ合わない
海外では、野良犬が普通にいる国の方が多いです。
なので、こっちが意図していなくても遭遇することはあります。
ほとんどの犬はおとなしいので、びくびくする必要はありませんが、自分から不用意に近づいていくようなことはやめましょう。
犬というのは縄張り意識があり、自分の縄張りに入ってきた犬や人に対して威嚇をします。
さらに、狂犬病にかかっている犬は攻撃的になっていることが多いです。
犬が威嚇してきても、決して走って逃げてはいけないようにしましょう。
犬は走っているものを本能で追いかけてしまうので、できるだけゆっくり後ずさりをして縄張りの外に出ることが望ましいです。
飼い犬でも狂犬病ウイルスを持っていることもある
日本の飼い犬は狂犬病の予防接種が義務付けられているので、犬と触れ合ったりするのは何の問題もありません。
しかし、海外では同じようになでたりして動物と触れ合わないようにしましょう。
海外では家庭で飼っている犬などでも狂犬病にかかっている可能性があります。
狂犬病の予防接種を受ける
狂犬病の予防接種を事前に受けておくことで、狂犬病の発病確率をさげたり、噛まれた後にするワクチン接種の回数を減らすことができます。
狂犬病の予防接種は期間を開けて3回必要です。
日本では
- 0日目
- 30日目
- 6〜12カ月後
の計3回の接種が必要です。
僕がタイのバンコクにあるスネークファームで受けた時は0日目、7日目、21日目の3回接種でした。
予防接種は日本でも、タイでも、他の国でも受けることができます。
でも世界一周などの長期旅行者は、予防接種の料金が日本より格段に安いタイで予防接種をする人が多いです。
下の記事に僕がかかった料金をまとめています。
狂犬病になった犬の症状
上記で狂犬病の予防方法として「動物と触れ合わない」ことが有効と紹介しましたが、最後に狂犬病に感染している犬の症状を紹介します。
世界的に見ても野良犬から感染することが多いので、知っておきましょう。
狂犬病にかかった犬の症状は、主に2種類あります。
- 非常に攻撃型になる「狂躁型」が80%
- 元気がなくなり、ぐったりしている「沈鬱型」が20%
狂犬病ウイルスが発症している「狂躁型」の動物はとにかく凶暴になり、
- 大量のよだれを垂らし
- ものに噛み付いたり
と、とにかく独特の行動をするので、そういう変だなと思う動物には絶対に近づかないようにしましょう。
海外では100%の致死率である狂犬病に気をつけよう
今回はどれぐらい狂犬病が恐ろしいのかをまとめてみました。
狂犬病は感染し、発症すると怖い病気ですが、野良犬には不用意に近づかないようにしたり、予防接種を受けることで予防できます。
さらに噛まれてもちゃんとワクチンを接種すれば発症することはないので、パニックになる必要はありません。
狂犬病に関する正しい知識を持って、旅を楽しんでください。